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1.色の正体


 ずばり「色」とは何でしょうか?

 少し言い換えて、私たちはどうやって色を認識するのでしょうか?  そのプロセスを解き明かしながら「色」を理解していくことにしましょう。

 たとえば、ここによく熟したサクランボがあります。

山形のさくらんぼ

 熟したサクランボは赤いですね。 でも、なぜ赤く見えるのでしょうか。

 赤い色を認識するのは、私たちの脳です。 目に入ってきた情報が視神経を伝わり、最終的に脳で色を判断するのです。

 目に何が入って来るのかというと、光です。 光がなければ、私たちは色どころか、そこにサクランボがあることさえも分かりません。 もっとも、実際目の前にサクランボがある場合、手で触ったり、匂いを嗅いだり、食べたりすればその存在は明らかになりますが、視覚的には光がなければ存在を確認することはできません。

 「光」の正体となると、これまた難しい議論が起こってしまうのですが、ここでは光は波の性質を持ったもの、とだけ理解してください。 波には長さ(波長)があります。 この波長の違いが色の違いになります。 つまり、私たちは波長の違いを感じ取って、色を区別しているのです。

光のスペクトル

 上の虹色のグラデーション、どこかで見たことがあるでしょう。 これを光のスペクトルと言います。 太陽光のような白色光をプリズムという三角形の物体に通すと、このような色の帯に分解されます。

 スペクトルの左、つまり色が青くなるほど光の波長は短く(短波長)なります。 反対に右、つまり赤くなるほど光の波長は長く(長波長)なります。 真ん中の緑色あたりの光の波長領域は中波長域と言います。

 これらさまざまな波長の光のうち、赤を示す長波長の光が目に届くことで、私たちはサクランボが赤いと認識するのです。

 さて、その光はどこからやって来るかと言えば、サクランボからですが、サクランボそのものが光を発しているわけではありません。 光源が必要になります。 光源は、時として太陽の直射日光の場合もあれば、屋内の蛍光灯の光という場合もあります。 光源から発せられた光がサクランボに反射して、私たちの目に届くわけです。

 これら光源の光は、何色でしょうか?

 それは時と場合によりますが、日常生活においては白色(太陽光や蛍光灯)が多いですね。 白い色を示す光というのは、青から赤まであらゆる波長を持っています。 かつてテレビと言えば、ブラウン管の画面が主流でした。 ご存知の方なら容易にイメージがつくかと思いますが、ブラウン管には青・緑・赤の3色の小さなかたまりが無数に並んでいます。 この3色は色光の三原色と呼ばれ、青は短波長域の光、緑は中波長域の光、赤は長波長域の光になります。 これら3色の光の強さを調節し、組み合わせることによって無数の色を再現していました。 そして、3色の光を同時に発光させると、つまり短・中・長のあらゆる波長領域の光が同時に目に届くと、「白」になるのです。

 くり返しますが、私たちが白を認識するのは、短・中・長のあらゆる波長(以降は分かりやすいように「すべて」という表現を使うことにします)の光が目に届いていることを意味します。 白い色をした物体というのは、すべての波長の光を反射する性質を持っているということになります。 逆に、すべての波長の光が反射されない、つまり物体に吸収される場合が黒です。 ただし、すべての光が物体に吸収されるということは、光が私たちの目にまったく届かないわけですから、その物体の黒い色どころか、物体そのものを視覚で認識することができません。 つまり、完全な「黒」は私たちは見ることができないのです。

 そして、これらの波長のうち、長い波長の光だけが反射されることで、正確には長波長の光が一番多く反射されることで、私たちは長い波長の光を感じ取り、赤い色を認識するということになります。 つまり、サクランボが赤いというのは、サクランボは短・中波長の光を吸収して、長波長の光を反射する性質を持っているということと同義なのです。

 おさらいすると、白い光がサクランボに当たると、このうち青や緑の性質を表す短・中波長の光は吸収され、長波長の光ばかり反射されます。 すると、目には長波長の光ばかり届けられ、脳でサクランボの存在とともに、赤い色を認識するのです。

 では、もしも、サクランボに蛍光灯のような白色ではなく、青い光が当てられたら、サクランボはどう見えるのでしょうか?  赤く見えるでしょうか?

 上の理屈に当てはめれば、ノーです。

 青い光は短い波長しか持っていません。 青い光がサクランボに当たっても、長い波長がないので、反射されることも、目に届くこともありません。 だから赤く見えません。 まあ、実際はサクランボは青い光を完全に吸収するわけでもないので、サクランボそのものは見ることができますし、 色の恒常性という現象により、元々のサクランボのイメージに引きずられて脳内ではなおも赤く感じてしまう場合があります。

 また、身近な例にトンネルがあります。 高速道路などのトンネルは、内部の照明が黄色(オレンジ?)である場合が多いですよね。 あれはナトリウム灯と言って、特定の波長の光しか発しない光源です。 ですから、トンネル内ではほとんど色みのない世界に変わります。

 このように、色は物理的には波長の反射具合によって区別することができます。


「2.色と光の関係」へすすむ。

 


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